今春の高校入試の概況(3)(私立・国立編)

一般応募状況

 私立高校の推薦入試は、概ね前年度並みとなっています。
 東京都の授業料軽減助成金制度は2017年度、2020年度に拡充が図られ、私立高校への志望率は上昇傾向にありました。そんな中、2021年度入試では、2020年春の一斉休校により学力に不安を持つようになった層がペーパーテストによる入試を避け、内申重視の私立推薦入試へと向かいました。2023年度入試の受験生たちは中学校入学時に一斉休校を経験した世代でした。都立高入試では受験者全体に安全志向が働いたと考えられる動きがあり、学力への不安は中学3年生進級時に一斉休校だった2021年度の受験生以上だったのではないかと思われます。それにもかかわらず受験生の私立志向がさらなる進行を見せなかったのは、2022年の急速な円安・物価高が一因ではなかろうかと考えられます。助成金制度が充実したとはいえ、すべての学費が無償化されたわけではなく、都立や通信制の基本的に通学しないコースと比べると保護者の負担は重くなります。助成金制度拡充以前と比べれば依然私立志向は継続していると言えるものの、経済的不安感がそれにブレーキをかけたのではないでしょうか。
 一方、一般入試の応募者数は前年度並みか増加している学力層が多く、集計できた範囲では前年度より約3,000人増えています。これは新型コロナウイルスに対する不安感が緩和されてきたことによって受験校を増やす動きがあったものと考えられます。

各校の選抜状況

①国立大附属
 国立大附属は、応募者減となっているものの例年の動きの範囲内に収まっているケースや、例年以上の応募者数になっているケースが目立ちました。この学力層では中学受験経験者も多く、中学入学時の一斉休校による学力への影響は小さかったかもしれません。
 筑波大学附属は男女ともに応募者微減。男子は隔年現象で倍率ダウンの年に当たりました。筑波大学附属駒場は2年連続で応募者減、かろうじて実質倍率3倍台を保ちました。東京学芸大学附属への流れがあったかもしれません。前年度が過去10年で最多の応募者数だったお茶の水女子大学附属は約50人の応募者減でしたが、それでも同校としては多い数です。一時応募者数が減少傾向にあった東京学芸大学附属は2年連続の応募者増で1,000人を超えました。同校が2019年度に導入した「入学確約書」への受験生の対応が定まりつつあるのではないかと想像されます。東工大科学技術は2年連続の応募者増となりました。2026年4月の大岡山キャンパスへの移転・新校舎建設に向けたスケジュールが改めて示されたことが安心材料となったかもしれません。

②私立難関進学校および大学附属校
 開成は前年度とほぼ同じ応募者数、城北もほぼ横ばいです。5科型入試を導入して3年目の巣鴨は5科型入試の応募者が約80人増、3科型入試は9人増で、合格最低点も両方で上がって非常に厳しい入試になりました。
 青山学院は隔年現象で倍率ダウンの年に当たり、推薦入試27人減、一般入試8人減となりましたが、依然人気を保っていると言えそうです。明治大学付属明治は一般応募者が200人増と大幅に伸びました。青山学院の入試日変更が影響したかもしれません。慶應義塾女子は前年度の推薦入試が6倍近い実質倍率だったため敬遠され30人減ですが、一般入試が16人増で、推薦から一般にシフトした形です。

③私立進学校
 2020年度に共学化した品川翔英は共学化2年目の2021年度に大幅な定員超過となったため、2022年度は定員を減らし、内申基準を上げたうえ、基準を満たしていても合格は確約しないと明言することで応募者を抑制していました。新校舎の使用を開始する2023年度は再び定員を増やし、応募者も増えています。東洋は前年度総進を募集停止、特選と特進の推薦基準を上げたため応募者が半減していましたが、2023年度は特進の併願優遇を復活させたことで大幅に応募者増となっています。桜丘は前年度に大幅な定員超過になり、2023年度は定員厳守のため大幅な募集要項の変更を余儀なくされました。岩倉は前年度にコース制をやめ、一日あたりの授業時限数で分けた募集を始めたところ、応募者数が伸びています。一般入試は共学化した2014年度以降で最多です。関東第一は都内生が利用できない併願推薦の受験者数が大幅に増えており、千葉県からの流れがあったと思われます。